豊橋の税理士 提中です。
新聞、テレビ、ネットでも大きく取り上げられているように、令和5年度の税制改正により令和6年以降に行う贈与について大きな改正が入りました。
今回の記事では改正点と改正を受けて今後どのような方針で贈与を行うべきかについて見ていきたいと思います。
改正が行われた背景
改正が行われた背景については、財務省が今年の2月に公表した「令和5年度税制改正(案)のポイント」に記載があります。「資産移転の時期の選択により中立的な税制」の構築を目的とした改正となっており、具体的には下記状況を打破するための改正となります。
相続税の累進回避を防止するため贈与税の税率は相続税の税率よりも高い税率となっている。
→相続税がかからない方、かかっても少額である方については、贈与税率が高いことにより若年層への生前移転が進みにくくなっている。一方、相続税が多額にかかる方は生前に贈与することで相続税よりも低い税率で財産の移転を図れる。
贈与する人の財産状況によって現行のルールが贈与の妨げとなったり、節税策に使われたりする状況を改善し、中立的な内容にするための改正と言えます。
改正内容
暦年贈与と相続時精算課税贈与のそれぞれに下記の改正が入りました。
①暦年贈与に対する改正
・相続発生日から3年以内に行われた贈与については相続財産に加算されますが、この期間が3年から7
年に延長となりました。ちなみに延長された4年間分の贈与については総額100万円を控除した金額が
加算されます。
②相続時精算課税に対する改正
・暦年贈与の基礎控除とは別に毎年110万円までは課税がされません。
・年間110万円の範囲内での贈与の場合、贈与税申告も不要となります。
・相続が発生した場合、各年110万円を控除した金額が相続財産に加算されます。
(例:1年目150、2年目200を贈与した場合、(150-110)+(200-110)=130が加算額となります)
令和5年はどう贈与すべきか
令和5年は改正前の規定で贈与が行える最後の年になります。
御自身が相続を迎えた場合に課される相続税率を計算し、相続税率よりも低い税率となる範囲で
ある程度まとまった財産を次世代に贈与する対応が得策となります。
相続税の最低税率は10%、親から子等に贈与を行う場合、500万円贈与する場合の贈与の実効税率が10%弱となりますので、500万円が一つの目安になります。10%超の相続税率がかかる方については、よりアグレッシブに贈与を行うのも一つの考え方です。
令和6年以降はどう贈与すべきか
①暦年贈与の生前贈与加算は相続により財産を取得した者が対象になります。
相続人以外の方への暦年贈与はそもそも加算対象外となるため孫への贈与はこれまで通り有効です。
②7年以内に亡くなる可能性が低い方については引き続き暦年贈与を継続する対応で良いと考えます。
贈与後、7年経過すれば贈与した額は相続財産から除かれるためです。
③7年以内に贈与者に相続が発生する可能性がある方については、令和6年以降は相続時精算課税贈与を選択されるのが良いと考えます。また、各年110万円を控除した額は相続財産に足し戻されませんので、贈与する範囲を広げるのも良いと思います。
④相続時精算課税贈与と暦年贈与は贈与者ごとに選択できる制度です。そのため、例えば父から子への贈与は相続時精算課税贈与、母から子への贈与は暦年贈与を選択することが可能です。
今回、暦年贈与とは別規定で相続時精算課税贈与の基礎控除が設けられたことから、暦年贈与と相続時精算課税贈与を組み合わせれば次世代へ年間220万円を非課税で移すことも可能になりました。暦年贈与は7年間という持ち戻し期間の延長された点には注意が必要ですが、早期に財産を次世代に移すことはできるようになったといえそうです。