会社分割を活用した事業承継対策について

事業承継

豊橋の税理士 提中です。

まだまだ暑い日が続きますが、朝晩はだいぶ涼しくなり秋の気配が感じられる季節となりました。
蝉の声もいつの間にやら聞こえなくなり、夜には窓を開けると虫の涼しげな声が聞こえてきます。
あれほど暑さに苦しめられた夏なのに、終わりが見えてくると若干の寂しさを感じられるのが
不思議に感じられます。

さて、本日は会社分割についての記事を投稿致します。

会社分割は組織再編の一類型

会社分割とは、特定の事業を他の法人に承継させる組織再編行為です。
つまり、1つの法人で複数の事業を抱えている場合に、ある特定事業をその法人から
切り出し、別の法人に移すことを指します。

既に存在する会社に事業を承継させる会社分割は吸収分割、新しく会社を設立し、
設立した会社に事業を承継させる会社分割は新設分割と呼ばれます。

会社や事業の整理を行う際の会社分割の有用性の認識が深まり、中小企業においても活用例は
増加傾向にあります。

会社分割を活用した事業承継対策の一例

続いて会社分割を活用した事業承継対策として、2つ事例を紹介します。

①事業会社のホールディングス化

【事例】
・太郎さんはA社の社長兼株主であり、A社は製造業と不動産事業を営んでいます。
・太郎さんは更なる事業の拡大を目指しており、今後M&Aも積極的に行っていきたいと考えています。
・その反面、A社が複数の事業を抱えることですべての事業を経営監督することが難しくなるとの
考えもあります。

【解決策】
・会社分割によりA社の製造業を切り出し、A社の子会社であるB社に製造業を承継させます。
・A社は不動産事業を行う事業持株会社(※)となり、M&Aを行う際はA社が株式を取得します。
・B社、C社、D社の直接の業務執行を他者に任せることで、太郎さんはグループ全体の経営監督
に専念することができるようになります。
・また、事業から撤退する場合には、子会社株式を売却して手放すことで対応ができます。

※株式の保有のみならず、企業支配以外の事業を自ら営む持株会社

事業部門と不動産賃貸業の分社化

【事例】
・太郎さんはA社の社長兼株主であり、A社は製造業と不動産事業を営んでいます。
・太郎さんには子供がいますが、サラリーマンとして県外で働いており今後事業を引き継ぐ
ことはありません。
・不動産事業は安定した稼ぎを得ているため、社長退任後も不動産事業は自分の手元に残したいと
考えています。そして、将来的には子供に、財産として残したいと考えています。

【解決策】
会社分割を行うことで上記のニーズをすべて満たすことができます。
具体的には、下記の手順で対応を進めていくことになります。

step1
会社分割によりA社の不動産事業を切り出し、太郎さんが出資するB社に承継させます。

step2
製造業のみを抱えるA社は、太郎さんが社長を退任するタイミングでM&Aにより外部売却。
不動産賃貸業を抱えるB社は、収入確保を目的として引き続き株式を太郎さんが保有継続。
将来的に子供にB社株式を承継させることでB社(=不動産事業)は太郎一族の財産として
引き継がれていきます。