インボイス制度導入に関する負担軽減措置

インボイス

豊橋の税理士 提中です。
インボイス制度開始に向けて様々な負担軽減措置が講じられております。
今回は負担軽減措置について解説していきます。

1、登録制度の見直しと手続きの柔軟化(全ての事業者)

インボイスを発行するためには適格請求書発行事業者への登録が事前に必要となります。
その手続きが改正により柔軟化されました。

【改正前】
令和5年10月1日に登録を受けるためには令和5年3月31日までに申請が必要でした。
4月1日以降に申請する場合には期限内に申請することが困難な事情の記載を行うことが必要でした。

【改正後】
令和5年4月以降に申請を行う場合であっても、困難な事情の記載が不要となりました。
これにより令和5年9月30日までに申請すれば10月1日から適格請求書発行事業者となることができるようになりました。

2、少額な返還インボイスの交付義務免除(全ての事業者)

インボイス制度開始後は、取引後に値引きや返品があった場合には、売手側に返還インボイスを交付
する義務が課されます。改正前問題となっていたのが、仕入先が振込手数料を差し引いて支払いをして
来た場合の取り扱いです。差し引かれた振込手数料を売手が売上値引きとして処理する場合でも返還インボイスの交付義務がありました。これに改正が加わり税込1万円未満の値引き・返品については返還インボイスの交付義務が免除されることになります。

【改正前】
売上の値引き・返品をする場合、金額問わず売手側は返還インボイスを交付する義務があります。

【改正後】
値引き・返品金額が税込1万円未満の場合は、交付義務が免除されます。
なお、差し引かれた振込手数料を売上の値引きではなく、支払手数料として仕入税額控除を取る場合には、
振込手数料に係るインボイスと立替金精算書を仕入先から入手する必要がありますのでご注意下さい。

3、一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(小規模事業者のみ)

一定規模以下の事業者の事務負担の軽減を図るために、少額のインボイスの保管に関する見直しがされました。

【改正前】
事業者の規模や取引金額に関係なく、すべてのインボイスの保存が求められていました。

【改正後】
小規模な事業者かつ少額取引についてはインボイスの保存がなくとも、帳簿の記載により仕入税額控除
が認められます。詳細については下記の通りです。

①適用対象者
 基準期間における課税売上高が1億円以下の事業者もしくは特定期間(※)における課税売上高が5千万円
 以下である事業者が対象となります。

(※)個人事業者の場合→前年1月から6月までの期間
   法人の場合→前事業年度の開始の日以後6ヶ月の期間(3月決算の場合は前年4月から9月までの期間)

②適用対象期間
 令和5年10月1日から令和11年9月までの期間の間に行う課税仕入が対象となります。

③金額判定
 一回の取引の合計額が税込み1万円未満である場合に適用されます。

4、小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(小規模事業者のみ)

これまで免税事業者であった者がインボイス発行事業者として課税事業者になる場合の税負担及び事務
負担の軽減を図るため、3年間、当該事業者の納税額を売上税額の2割とすることができる緩和措置が講
じられることになりました。

①適用対象者
 インボイス発行事業者の登録を受け、登録日から課税事業者となる免税事業者

②適用対象期間
 令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間
 令和5年10月1日までに登録した場合の適用対象期間
 ・個人事業者→令和5年度、6年度、7年度、8年度分の計4回が対象
 ・法人(3月決算法人の場合)→令和6年3月期、令和7年3月期、令和8年3月期、令和9年3月期

③納税額の計算方法
 売上税額の2割が納税額となります。例えば売上により消費税を100預かった場合はその2割の20が
 消費税の納税額となります。
 簡易課税制度に似ていますが、業種に応じた売上の区分が不要であること、事前に申請不要である点、2年間適用が強制されない点に大きな違いがあります。
当該特例を適用する場合は、消費税の申告書に設けられる記載欄に適用を受ける旨を付記する対応となります。