豊橋の税理士 提中です。
令和6年度の税制改正大綱の中に、倒産防止共済制度を改悪する内容が盛り込まれていましたので解説したいと思います。
【想定読者】
倒産防止共済制度に加入中の個人・法人で解約を検討されている方
中小企業倒産防止共済制度の概要と加入メリット
中小企業倒産防止共済制度の概要
中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)は、取引先事業者の倒産による中小企業の連鎖倒産、経営難に陥ることを防ぐために中小機構が運営する共済制度です。
中小企業倒産防止共済制度に加入することで得られるメリット
メリット① 掛金は全額費用に計上できる
中小企業倒産防止共済の掛金は全額費用計上が可能です。
月ごとの掛金は最大20万円までとされており、年間240万円まで経費計上ができます。
また、短期前払費用の特例も適用できますので、事業年度内に240万円の支払が完了すれば、240万円がそのまま費用に算入でき節税を狙えます。
なお、掛金の上限は800万円とでとされています。
(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例)
第六十六条の十一 法人が、各事業年度において、長期間にわたつて使用され、又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で次に掲げるものを支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための同法第二条第二項に規定する共済契約に係る掛金
租税特別措置法第66条の11より抜粋
メリット② 無担保・無保証人で、掛金の10倍まで借入れ可能
共済金の借入れは、無担保・無保証人で受けられます。
貸付額の上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」と、「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ない金額となります。
メリット③ 取引先が倒産後、すぐに借入れできる
連鎖倒産を防ぐことを目的としたものですので、取引先倒産後、スピーディに借入を受けることができます。
メリット④ 解約手当金が受けとれる
契約を解除した場合には、解約手当金を受け取ることができます。
任意解約の場合、12か月以上納めていれば、掛金の8割以上が戻ります。
40か月以上納めていれば、掛金は全額戻ります。
ただし、納付期間が12か月未満の場合には、掛け捨てとなるため注意が必要です。
解約手当金は全額収益計上されますので、赤字である事業年度や、何か多額の経費(退職金の支払、大規模な修繕費の支払)が発生する事業年度で解約すると効果的です。
2024年度税制改正により制度が改悪
令和6年度の税制改正大綱において、下記の記載がございます。
特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例における独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済事業に係る措置について、中小企業倒産防止共済法の共済契約の解除があった後同法の共済契約を締結した場合には、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する当該共済契約に係る掛金については、本特例の適用ができないこととする(所得税についても同様とする。)
(注)上記の改正は、令和6年 10 月1日以後の共済契約の解除について適用する。
令和6年度税制改正の大綱より引用 https://www.soumu.go.jp/main_content/000919575.pdf
これにより、令和6年10月1日以降に共済を解約すると、その後2年間は再度共済に加入しても、掛金を経費に計上することができなくなります。
改正に至った理由は・・・。
掛金を損金算入できる仕組みを使い、決算の利益額を調整する動きが目立ったためとされています。
実際、3、4年目に共済を解約する比率は任意解約全体の1/3を占めるとの話もあります。
改悪を受けて取るべきアクション
これは言わずもがな、令和6年9月30日までに解約するの一言につきます。
10月1日以降に解約した場合に、費用計上の制限を受けるとされていることから、文字通りに受け止めれば、9月30日までに解約した場合には、改正の影響を受けないものと考えらえます。
解約して、再度加入することを考えていない事業者については、10月1日以降に解約しても影響は
ないですが、解約と再契約をセットで行い、節税を狙う事業者については、9月30日までに解約
することはマストと考えます。