個人事業を法人化することによって得られるメリット(その1)

法人

豊橋の税理士 提中(だいなか)です。

昨日は個人事業を法人化した際に生じるデメリットについて解説しました。
デメリットだけ見ると、法人の設立により維持コストが増えるだけのような印象を受けますが、
法人を設立することにより得られるメリットにはかなり影響の大きなものがあります。

本日は個人事業を法人化することによって得られるメリットについて解説していきたいと思います。
メリットも複数あるため、何回かに分けて記事にまとめていきます。

① 健康保険・厚生年金に加入できる

法人を設立し、その法人から給与を受け取ることで健康保険・厚生年金に加入することができます。
これは個人事業主の立場から代表取締役という役員の立場に切り替わったことによるものです。

健康保険・厚生年金に切り替わるメリットは次のものがあります。

給与により社会保険料が決定するため調整がしやすい

国民健康保険は前年の所得を基に計算がされるため、個人事業で高額の所得を得ている方には
重い負担がのしかかることになります。

現在は87万円が上限とされていますが、2万円引き上げられ89万円が上限になる方針も打ち出されているようです。

個人事業として所得の調整をするためには、売上を減らす、経費を増やす等の対応が必要ですが、
社会保険料の負担を減らすために事業に支障が出ては本末転倒です。

反面、健康保険・厚生年金は法人から受け取る給与の額を基に保険料が算定されます。
そのため、給与の支払額を調整するだけで簡単に社会保険料をコントロールすることができます。

国民健康保険 年間保険料の上限額2万円引き上げて89万円の方針

配偶者・子を被扶養者とすることができる

国民健康保険に加入している場合には、配偶者や子を扶養に入れることはできないため、
配偶者や子の所得が合算され、世帯主がまとめて国民健康保険料を負担することになります。

国民年金にも、扶養という概念はないため、配偶者自身も国民年金に加入して年金保険料を
支払う必要が生じ、世帯で見ると二重払いしているような状態になります。

しかし、健康保険に加入すれば、配偶者を扶養に入れることができるようになりますので、
扶養の範囲内で配偶者が稼ぎを得る限り、その稼ぎに応じた保険料負担は生じなくなります。

年金についても、厚生年金に入ることで、配偶者を第3号被保険者とすることができるようになるため、
ある種の二重払いの解消が図れます。

② 経費計上できる範囲が広がる

賃貸物件を社宅扱いにすることで家賃全額を経費に計上できる

個人事業の場合でも、居住用物件の家賃の一部を必要経費に計上することは可能です。
ただし、個人は事業主としての顔と生活者としての顔があるため、事業と生活の両方に関係してくる
家賃は家事関連費とみなされます。

よって、必要経費に計上できる額には限度があり、せいぜい「家賃×事業スペースの床面積/家屋の床面積全体」までとなります。

しかし、法人の場合には、福利厚生の一環で役員のために社宅を賃借契約した扱いとできますので、
支払う家賃の全額を必要経費に算入できます。

賃貸借契約を法人にする、国税で定められた一定の家賃相当額を個人から徴収する等、
一定の対応を取らないと利用できないスキームではありますが、要件を満たした上で活用が
できれば大きな節税メリットにつながります。

出張時の出張手当を経費に計上できる

出張に際して要した交通費の実費分は個人事業でも必要経費にできます。

しかし、法人を設立することで実費分に加え、出張手当を経費に加えることができます。

しかも、この出張手当は経済的利益に該当しないこととされており、所得税がかかりません。
つまり、法人で旅費交通費として経費に計上しつつ、受け取った個人では全く課税がされないという特徴があるのです。

こちらも法人に限って認められる制度となります。

保険料

個人で保険料を支払う場合、生命保険料控除の適用が受けられます。
この控除には上限があり、どれだけ保険料を支払っても12万円で控除上限に達してしまいます。

しかし、個人が負担すべき保険料を、福利厚生の一環として法人が負担することで支払った
保険料の全額を法人の経費として計上ができます。

保険の種類や条件により、経費計上できる範囲は異なりますが個人で負担するよりは
節税につながることは間違いありません。

まとめ

本日は法人化することで得られるメリットの一部について解説しました。
他にもいくつかメリットがありますので、こちらは次回の記事に譲りたいと思います。

そろそろ法人化が必要かなと悩まれている方はお気軽に弊所までご相談下さい。
個人事業を継続した場合と法人化した場合との比較を行い、どちらが有利かを確認致します。