不動産賃貸業を営む事業者が注意すべき償却資産に関する論点について解説

所得税

豊橋の税理士 提中(だいなか)です。

不動産賃貸業を営む事業者については、他の業種にはない償却資産に関する論点がいくつかございます。

設備投資額が大きく、処理誤りを起こすとインパクトが大きい論点となりますので、
本ブログを参考に適切な処理に繋げていただけますと幸甚です。

①減価償却費の計上を開始するタイミングについて留意が必要です。

減価償却資産については、資産を事業の用に供した日から、減価償却費の計上を開始することになります。

「事業の用に供した日」とは、減価償却資産を本来の目的のために使用を開始した日をいいます。

例えば、機械については、機械を工場内に搬入しただけでは事業の用に供したとはいえず、その機械を据え付け、試運転を完了し、製品等の生産を開始した日が事業の用に供した日となります。

この資産を事業の用に供したか否かは、業種・業態・その資産の構成および使用の状況を総合的に勘案して判断することになります。

不動産賃貸業の場合、この事業の用に供した日はどのタイミングになるのでしょうか。

賃借人と賃貸借契約を結んだ日や、実際に賃借人が入居した日など、いくつかのタイミングが考えられますが、正解は建物を賃貸に出せる状態となっており、かつ入居募集を始めた時点となります。

この点については、明確に国税庁HPのタックスアンサーにて明記がされております。

実際に入居者がいなくても、前倒しで減価償却費の計上はできますので、ご注意下さい。

事業の用に供した日とは、資産を物理的に使用し始めた日のみをいうのではなく、例えば、賃貸マンションの場合には、建物が完成し、現実の入居がなかった場合でも、入居募集を始めていれば、事業の用に供したものと考えられます。

国税庁HP 事業の用に供した日(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5400-2.htm)

②賃借している建物に内部造作を行い、賃貸している場合には耐用年数について留意が必要です。

耐用年数の考え方

他人から賃借している建物を改修し、賃貸に出している事業者は、造作費用の耐用年数について注意が必要となります。

【原則】
その造作等を一つの資産として、建物の耐用年数、行った造作の種類、用途、使用材質等を勘案し、合理的に見積もった耐用年数により償却します。

注意点としては、電気設備、ガス設備、給排水設備等の建物付属設備に該当する造作については、
合理的に見積る対象には含めず、建物付属設備の法定耐用年数を適用することになります。

【例外】
賃借している建物について、賃借期間の定めがあり(賃借期間の更新ができないものに限る)、退去時に、改良にかかった費用の請求又は買取請求をすることができないものについては、賃借期間を耐用年数として償却することが認められます。

賃借契約を解除する時点に、未償却残高が残る場合には、解除した事業年度で未償却残高全額を損金計上します。

耐用年数の見積もり方法

具体例を基に、耐用年数の見積もり方法を以下で例示致します。

(前提条件)

建物の用途・・・住宅用
造作内容・・・・収納棚1,600千円、床タイル工事3,400千円、その他の木造内装11,000千円

(計算方法)

①造作を構成する種類や材質ごとに区分し、個別の耐用年数を判断

・収納棚⇒器具及び備品の家具として8年
・タイル工事⇒取替実績により10年
・木造内装⇒木造建物・居住用の22年

②個別の耐用年数に基づき、個別資産ごとの年償却額を算出。
造作の取得価額を年償却額で除して、造作全体の耐用年数を見積もる。
(16,000千円÷1,040千円=15.38→15年)

造作内容取得価額個別年数年償却額
収納棚1,600千円8年200千円
タイル工事3,40010年340
木造内装11,00022年500
合計16,00015年1,040

耐用年数の合理的な見積もりが困難である場合の対処方法

計算方法を例示しましたが、見積もりが困難であるときには、最も耐用年数が長い造作内容に
合わせる形で資産計上しておけば問題は生じません。(上記の例では22年)

税務調査が入った際、費用に関して問題視されるのは、あるべきタイミングよりも先に前倒しで費用を計上してしまっている場合です。

適用した耐用年数が、本来あるべき耐用年数よりも短いと問題になりますが、長い分には費用の計上が後ろ倒しになるため問題とされる可能性は低いことになります。

まとめ

本日は賃貸業を営む事業者特有の、償却資産に関する論点についてブログにまとめました。

ご不明点などございましたらお気軽にお問い合わせよりご連絡下さい。