取引先と会食を行う場合の交際費の金額基準が変更になる見込み。交際費の税務処理振り返り。

法人

豊橋の税理士 提中(だいなか)です。

日本経済新聞をはじめ、多くのメディアから交際費に関する改正記事が公開されております。
日本経済新聞では次のような記事が公開されておりました。

政府・与党は企業が使う交際費について経費処理で非課税にできる上限額を現行の1人あたり5000円から1万円に増やす。物価上昇で飲食費が高騰しており今の水準では不十分だとする意見が強まっていた。飲食業界を側面支援する狙いもある。

与党の税制調査会の議論を経て、週内にも決定する2024年度税制改正大綱に盛り込む。

日本経済新聞HPより(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA102HE0Q3A211C2000000/)
企業の交際費、経費上限5000円から1万円に 政府・与党 - 日本経済新聞
政府・与党は企業が使う交際費について経費処理で非課税にできる上限額を現行の1人あたり5000円から1万円に増やす。物価上昇で飲食費が高騰しており今の水準では不十分だとする意見が強まっていた。飲食業界を側面支援する狙いもある。与党の税制調査会の議論を経て、週内にも決定する2024年度税制改正大綱に盛り込む。交際費は原則、...

金額基準が引き上げになったことは喜ばしいことと考えます。
しかしながら、この恩恵を受けることができる法人は限定的であるというのが個人の所見です。

今回は飲食を行う場合の交際費の税務処理について、改正内容にも触れながらブログにまとめます。

【想定読者】

・交際費が年間800万円超ある中小法人

・飲食取引を行う場合の交際費の税務処理について詳しく知りたい経理担当者

交際費等の税務上の定義はどのようになっているか

交際費という言葉は日常会話でも意識せずによく使われますが、皆さんは交際費の税務上の定義をご存じでしょうか。税務上の定義は租税特別措置法に明記されています。

内容を簡潔にまとめると交際費は次のような定義となります。

交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先、その他事業に関係のある者に対する接待、供応(※)、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。

次に掲げるものは交際費等から除くこととされています。

  • 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
  • 飲食費であって、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下である費

今回の改正内容について

上記ハイライトした箇所に改正が加わります。
従来、社外の方と飲食を行い、その総額が1人当たり税抜5,000円以下である場合には、交際費から
除外されておりました。

そのバーが今回の改正により一人当たり10,000円以下に増加することが見込まれております。
日本商工会議所は、一人当たりの上限を20,000円以下にすべきとの提案をしていたようですが、
さすがにその提案は通らなかったようです。

一人当たり1万円でも私を含む庶民の感覚からすると十分ですよね。

今回の飲食取引の上限引上の恩恵が限定的である理由とは

そもそも、交際費には飲食取引を行う場合の非課税枠とは別に800万円の非課税枠が用意されています。

それは資本金1億円以下の中小法人については、交際費等については年間800万円までは損金(税金計算上の費用のこと)として認める措置を指します。

そのため、一人当たり5,000円を超える飲食を行い交際費等として計上したとしても、その総額が800万円以下であれば、全額損金になります。

以上の理由により今回の改正で恩恵を受けられる法人は、800万円の枠が使えない資本金1億円超の大法人、もしくは800万円の枠を超えて交際費等が生じる中小法人に限定されるというわけです。

私の知り合いの社長も飲み会が好きで、毎年そこそこの交際費は使っていますが、さすがに年間800万円の非課税枠があれば既に十分ではないでしょうか。

むしろ中小法人が気を付けるべきことは給与課税されないこと

交際費には800万円の非課税枠があるのでその上限に達するまで好き勝手に使って良い。
飲食を行った際の非課税枠の上限が5,000円から10,000円に拡充されるならなおさらのこと。

そんな風に考えるのは早計です。そもそも、飲食取引を行う場合の5,000円基準は社外の方との飲食を行う場合に限定されております。

社内メンバーで5,000円以内の飲食を行った場合にはこの形式基準で判断することはできず、ケースバイケースで判断を行うことになります。

交際費で処理できる場合には、800万円の枠内に収まれば課税は何ら生じませんが、特定の社員・役員に経済的利益を与えたと認定されてしまうと、法人の当該支出は給与扱いとなり、源泉徴収漏れの指摘につながることになります。

従業員の場合には、徴収漏れの本税と附帯税を支払うだけで済みますが、対象が役員の場合には、役員給与は損金算入できないことから、法人税の課税所得の増加にもつながってきます。

個人的には、交際費が年間800万円を超える法人は少数であると思われます。

交際費に該当しないかどうかを気にするのではなく、特定の役員・従業員に経済的利益を与える
取引に該当していないか。その観点から飲食取引の支出を見つめることが何にもまして重要であると考えます。