愛知県豊橋市で税理士をしている提中(だいなか)です。
所属税理士(サラリーマン税理士)であった頃は、税理士会や所属支部が主催する研修には、
参加することは皆無でした。
理由としては、日々の業務で手一杯だったこと、業務時間にオフィスを抜け出しすことに抵抗があったことの2点に集約されます。
翻って、独立してフリーとなった現在はと言いますと、税理士会の会費の元を取るべく、とにかく興味がある研修には積極的に出席することを意識しています。
研修を受ける中で、研修テーマとは直接の関連性がない内容ではあるものの、事業承継税制の後継者要件について注意喚起を講師から受けることが2度ありました。
今回は、事業承継税制の後継者要件の見直しをテーマに、ブログにまとめていきます。
【おさらい】特例事業承継税制の概要
先代経営者が所有している株式を後継者に移管する際、生前に贈与する場合には贈与税が、
相続により移管される場合には相続税が課されます。
経営者は自社経営に自己の時間と資源を投入していることから、財産のメインが自己が所有している
株式であるケースが多いと思います。
そのため、その状態で相続が発生した場合には、株を相続したものの、その株に対してかかる相続税
を納税するための、換金性のある財産が手元になく、円滑に経営権を承継できないといった問題が
生じます。
また、相続対策として株を生前に動かすことを検討しても、贈与税が多額にかかることから、
後継者に株を動かすことができないといった実態も多くありました。
そのような状況を踏まえ、一定の要件を、会社、先代経営者、後継者が充足していれば、株式の
贈与、相続に本来かかる税金について、納税を猶予できる拡充が図られました。
ざっくり言うと、それが特例事業承継税制の概要となります。
この制度は時限立法に基づくものであり、2027年12月31日までに行われた贈与及び発生した相続税
に対して適用されます。
期間の延長は実施されないことが、毎回の税制改正で主張されていることから、今後も延長が実施
される見込みはほとんどないものと考えていただいて良いと思います。
後継者要件の何に変更が加わる見込みであるのか
後継者要件にはいくつかのものがありますが、今回改正が加わる可能性がある要件は、役員就任期間が贈与時点で3年以上必要という点についてです。
相続時に特例事業承継税制を適用する場合には、相続時点で後継者が役員であることは求められていません。
しかしながら、贈与で生前に当該制度を利用する場合には、後継者は贈与時点で役員就任実績が3年
以上であることが求められます。
特例事業承継税制の適用期限は、2027年12月31日までですので、例えば2025年に入ってから後継者を
役員に就任させた場合には、後継者は役員に3年就任しているという実績を満たせないことから、生前に当該制度を適用できなくなるという問題がありました。(=相続が2027年12月までに起こることを願うしかない)
しかしながら、下記日経の記事にもある通り、来年以降に就任しても後継者要件を満たせるように
緩和措置が取られる見込みがあるようです。
背景等は、下記日経新聞の記事の抜粋をご参照いただければと思います。
色々書いてありますが、2027年までに当該制度を利用される意向がある先代経営者は、さっさと
後継者を役員に就任させましょう。
まだ役員になるには早いだとか、役員に就任させると自分の経営方針に口出ししてくるだとか、
色々躊躇する理由はあるのかもしれませんが、改正されるかどうかの不透明さを気にしながら、
経営を続けるのは精神的負担に感じるのではないでしょうか。
また役員に就任させることで、後継者の心情としても、責任が芽生える・頼りにされているという
プラスの気持ちが出てくることも見逃せない側面であると考えます。
政府の「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田文雄首相)が近くとりまとめる実行計画改定版の原案が5日、明らかになった。中小企業などの事業承継を後押しする税制優遇の特例措置について、現行は2024年末となっている後継者の役員就任期限を25年以降に延長する。
事業承継、税優遇要件を緩和 政府 後継者の役員就任期限、来年以降に延長案 日本経済新聞 2024/06/07 朝刊5ページ
承継時の税負担を軽くする税制を巡っては、非上場株などの贈与税や相続税の納付を猶予・免除している。現行制度で贈与税の優遇を受けるには、24年末までに後継者が役員になっていることが要件となっている。
原案には「来年以降に事業承継の検討を本格化する事業者にとって今年12月までに後継者を役員に就任させることは困難」と記し、見直しの必要性を強調。「税制を最大限活用する観点から役員就任要件のあり方を検討する」と明示した。
帝国データバンクの調査によると、中小企業の半数は後継者が不在だ。東京商工会議所によるアンケートでは後継者を決めるのに要する期間は「3年以上」との回答が4割にのぼり最多という。 政府内には後継者の就任期限を数年延長する案がある。年末にかけての与党の税制調査会で具体策を議論する。経営者の高齢化が進む中小企業の世代交代を円滑に進められるようにする。
【参考】役員登記のコストを抑えたいときはGVA法人登記の活用が便利
役員を新たに登記するためには、書類を作成し、法務局での登記手続きが必要となります。
司法書士に頼むとそこそこの手数料が発生します。
登録免除税等の実費を除いた純粋な司法書士報酬としては3万円程度が相場であるようです。(ネット調べ)
この点、GVA法人登記を活用すれば必要書類をわずか1万円で作成することができます。
司法書士が監修しているサービスのため、安心して活用できる点もメリットであると思います。
役員の新任登記をされる方については、活用をご検討されることをお勧めいたします。
まとめ
本日は特例事業承継税制の後継者要件の一つである、役員就任期間に改正が加わる可能性について言及致しました。
特例事業承継税制の適用を検討されている方については、今回解説した役員就任期間の要件も含めて、現在の状況で、適用を受けられるのかという現状把握を行うことが重要となります。
弊所では、要件を充足できているかの現状分析と、充足できていない場合の対処方法についてのアドバイザリー業務を提供しておりますので、関心のある方は、末尾の問い合わせフォームよりお問い合わせ下さい。
なお、特例事業承継税制のサポートを行える税理士を探すポイントとしては、その税理士が認定経営革新等支援機関の登録がされているかどうかを確認いただくと良いかと思います。
特例事業承継税制を適用するためには、特例承継計画を事前に提出する必要がありますが、この計画書には、認定経営革新等支援機関の所見を記載することが求められています。
登録がない税理士からは、この所見をもらうことができませんので登録の有無を事前に確認することが
重要となります。
自身の事務所近くで上記条件に合う税理士を探されたい方は、税理士ドットコム等の紹介会社を活用いただくのが一番便利です。